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ベトナム経済を牛耳る新興財閥・新興大企業の実態とは?

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※この記事は月刊エミダス(ベトナム版)の2020年2月号で掲載した記事と同じものです※

BRICSにも負けない成長を遂げるベトナムを支える新興財閥の存在

「BRICS」という言葉をご存知だろうか。

これは、近年めざましく経済成長をとげているブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカの頭文字をとった経済用語である。

その筆頭は、アメリカに取って代わり世界一の座を虎視眈々と狙う中国と、IT分野で急成長を遂げ“ポスト中国”との呼び声が高いインドだ。2017年の調査において、実質GDP成長率(以下、成長率)は、中国が6.9%・インドが6.7%と脅威の伸びを記録。日本の成長率は1.7%であったから、それらの数字がどれほど驚くべきものかが分かるであろう。

そんな中、「BRICS」に含まれていないにもかかわらず、彼らに勝るとも劣らない成長を遂げている国がある。そう、我らがベトナムである。

成長率6.8%で中国を上回らんとするほどの伸び率は、世界経済界において大きなかがやきを放っている。人口は約9400万人。社会主義国家ではあるものの市場経済システムを採用した刷新計画(いわゆるドイモイ)の成功が要因となり、国際競争力をジワジワと付け成長を遂げていることは皆様のご周知のとおりである。

さて、本コラムでは、世界的な規模で急成長を遂げるベトナムを、新興財閥・新興大企業の切り口から読み解いていこうと思う。

何を隠そう、ベトナムは個々の企業の成長はもちろんであるが、新興財閥・新興大企業の成長がベトナムを世界規模の市場競争に推し進めた過程に大きく関わっていると私は分析している。積極的に世界的大企業と競争を展開し、事業拡大・人材育成・社会的アプローチを行うことで、様々な分野で新興財閥・新興大企業が成功しているのである。

今回はそれらに代表される企業として、ベトナムの大財閥「ビングループ」、情報通信業界の新生「FPT」、国内の乳製品業界を牛耳る「ビナミルク」の3つに焦点を当てて説明していこう。

 

ベトナムの大財閥「ビングループ(Vingroup)」

ビングループはその名の通りグループ会社(いわゆる複合企業)であり、不動産開発を中心に観光・娯楽・小売・医療・教育・スマホなど、幅広い業界に進出し絶大な存在感を放っているのが特徴である。ホーチミン証券市場において時価総額は最大。2017年の売上高は約4,378億円、総資産も約1兆円という規模とともに、ベトナムのビジネス界の頂点に君臨している。

創業者兼オーナーのファム・ニャット・ブオン氏(Pham Nhat Voung)は1968年生まれ。ロシア留学を経て2001年より様々な事業を設立し成功を収めてきた。「ベトナムの孫正義」とも呼ばれ、資産を約1190億円も所持するということから、世界の長者番付に毎年名前を連ねている。51歳という若さでこの地位を築いたという事実も驚くべきものであろう。

ビングループは更に事業拡大を続けている。

AIなどのテクノロジー開発や電子産業系などの進出もさながら、私が最も注目すべきと考えているのは「2017年から自動車製造業に乗り出した」という事実である。しかし、読者の方々の中には「自動車産業はそう簡単に進出して成功できる分野じゃないはずだ」と思われる方も多いであろう。

それにもかかわらず、ビングループの鼻息は荒い。あの「BMW」から知的財産権を買い取り、ドイツの電子産業分野を得意とする大企業「シーメンス」、同じくドイツの自動車メーカーである「ボッシュ」とも取引を始めたのだ。そのうえ、車のデザインにイタリアのデザイナーを起用。24時間稼働のロボットも1200台導入するというのだから、ビングループの自動車産業進出に対する意気込みが伝わってくる。

となると、ビングループは圧倒的な力を持って、既にベトナムをマーケットとしている海外企業に真っ向勝負を挑むことは想像に難くない。もしこの挑戦が成功すれば、TOYOTA・日産・HONDAなどの日系自動車メーカーは苦戦を強いられることになるであろう。ご周知の通り、ベトナムは車のみならずバイクにおいても巨大なマーケットが確立されている。

一旦ビングループが自動車産業で成功を収めれば、日系自動車メーカーのベトナム展開においてこれが大きな鬼門となることは間違いない。

 

情報通信業界の新生「FPT」

FPTは“Financing Promoting Technology”(直訳すると「財政促進技術」といった感じであろうか)の頭文字を取ったもので、日本語では「ベトナム情報通信」の名で呼ばれている。

ベトナムの“お国柄”であろうか、ベトナムの大手企業はたいていが国営であるという。しかし、FPTは民間企業という形でベトナム最大規模のビジネスを展開しているという特殊な新興大企業だ。

1988年に設立されたFPTは、ベトナムのICT(情報通信技術)界において先駆者的な立ち位置を担ってきた。デジタルプラットフォーム・アプリケーション開発・テスティングに飽き足らず、クラウドやオートメーション技術(いわゆるRPA)・AI・IoT(モノのインターネット)など様々なデジタル分野で展開を行っている。

「ベトナムの最も価値のあるブランドランキング」にもランクインしており、ICT界の重鎮としてFPTは強い存在感を発揮しているのである。

また、FPTはベトナムICT業界初の快挙として“ドイツ第二位・欧州トップ”の実力者として知られる電力ガス会社「RWE」のM&A(合併買収)に成功。それに伴って、公共事業開発の事業も拡大しているとのことである。

さて、FPTの注目事業として私が取り上げたいのは、何と言っても「人材育成」である。

FPTは自身の大学を設立することで技術者を育成し、FPTの人材強化に尽力しているのだ。英語に堪能なソフトウェア技術者を育成し、2年間IT企業での実習を義務化しているなど、実践教育にも力を入れているのが特徴的である。また、2016年度の「QC世界大学ランキング」では5つ星を獲得し、世界的に実力が認められた。ご参考までにではあるが、この「5つ星」は日本の旧帝大・早慶・有名国公立に匹敵するレベルである。

この事実からも、いかにFPTが教育面に力を注いでいるかがご理解いただけるであろう。AI・ブロックチェーンなど様々な最先端技術が注目される一方で、それをカバーする人材の不足は世界的に問題視されつつある。しかし、9400万人という莫大な人口を抱えるベトナムから、それらの技術に対応できる人材が大量に輩出されれば、IT業界にとってはうってつけのポテンシャルとして、ベトナムが存在感を発揮することになるであろう。

FPTは海外展開にも力を注いでおり、33ヶ国に拠点を構えるまでに成長した。その中でも、FPTは日本を海外での重要マーケットと捉えている。

現地法人である「FPTジャパン」も「日本のIT企業の上位50社」のランクインに成功。日本の拠点は東京・大阪・名古屋・静岡・沖縄と地区別に拡大を続けている(FPTジャパンHPより)。FPT会長も「2020年をメドに日本の開発技術者を3千人規模に増やす」と表明。日本語を話せるベトナム人技術者を増やし、IT投資に盛り込むとのことだ。

日本は様々な最先端テクノロジーを武器に世界市場で存在感を発揮しているが、このFPTがその日本企業たちにどこまで食い込んでいくかは一見の価値ありであろう。

 

国内の乳製品業界を牛耳る「ビナミルク(Vinamilk)」

1976年に設立されたビナミルクは、ベトナム最大の乳製品メーカーである。牛乳やヨーグルトなどを主力製品にし、様々な乳製品を販売している。外国人の株式保有比率が約60%など、株式市場においても特殊な存在感を発揮している企業である。

弊社のベトナム人スタッフは、ビナミルクが大きく成長した要素として「教育の場でミルクがいかに健康に役立つか普及されたこと」「経済的な発展により収入が増えたことでミルクを買う余裕が生まれたこと」の2点を指摘していた。

それらに加えて、私は「ベトナム人生活のモダン化・西洋化による消費行動の変化」が大きく関わったと分析している。少し脇道に逸れるが、私のベトナム人の知人は、「ベトナム人は数年前まで犬の肉を食べていたが、昨今のペットブームなどでその行動に倫理的な問題を感じるようになった」と話していた。このように、ベトナムの文化再編における消費行動や需要の変動は大きなものがあるのであろう。さて、話を元に戻そう。

社会的なトレンドに相まってビナミルクの勢いは上昇、独自の徹底された流通経路を武器にシェアを拡大している。コンビニ、スーパー、直営のみならず、個人営業の商店にまで流通を管理することで、牛乳市場の54.5%、ヨーグルト市場の84.7%を独占するという圧倒的な独占力を持つまでになったのである。新工場の設立を通じて国内生産体制を確立し、欧州に負けず劣らずの品質コストを実現することで、生産コストも低く抑えることにも成功している。

また、ビナミルクはマーケティング戦略策定にも積極的に取り組んでいる。ビナミルクはシニア層に向けて、粉ミルクの販売を行っているのである。糖尿患者へのアプローチ・妊婦への栄養管理・心血管患者・脳卒中予防などを謳い、メディカル系の事業として新たな顧客層へリーチを伸ばしている。

これらの要因から、経済誌「フォーブス・ベトナム」によって作成されたベトナム企業のブランド力を数値化した「ブランド価値」のランキングにおいて、ビナミルクは日本円換算で約2400億円という破格の価値を記録し、2016年より4年連続で1位を獲得しているのだ。

ちなみに、さきほど紹介したビングループに所属している「ビンホームズ」のブランド価値は440億であり、ビナミルクはその5倍以上の差をつけているのだ。ビングループは複合企業のため単純比較はできないであろうが、それでもここまで大財閥のトップグループに大差をつけられるビナミルクには圧倒されるものがある。

このビナミルクにおいても、海外進出に注目が集まっている。

アジア諸国のみならず、中東地区・アメリカなど海外40ヶ国へ輸出を行い、ニュージランド・アメリカなどにも生産拠点を設置することで、海外展開を加速させている。こちらもFPTと同じく、日本への進出が行われれば大きな脅威となるであろう。

先程ビナミルクは高齢者向けに粉ミルクを販売していることを述べたが、少子高齢化に狼狽している日本において、ビナミルクは大きなビジネスチャンスが存在していると考えられる。ベトナムでのビジネスモデルをアレンジし、日本国内で成功を収めることができれば、ビナミルクの海外事業拡大が現実味を帯びてくるであろう。いかに「食品の“国産安全神話”が崇拝されている日本で、“ベトナム産”という海外食品ブランドがどれだけ認知されるようになるか」はビナミルクの進出において不可欠な要素となることは間違いない。ただ、これで成功を収められれば、今後も高齢化が進むと考えられている日本で、ビナミルクは莫大な売上とマーケットを確立することになるのだ。

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Kazuki Hori

Kazuki Hori

「3度の飯より10度のプロレス」を謳う重症患者のプロレスファン。 2019年8月よりハノイにて留学を開始。 マーケティングの勉強をキッカケにVEHO Worksにインターンとして参加、PR BOXの管理を任され現在に至る。 好きなレスラーは”世界一性格の悪いプロレス王”こと”鈴木みのる”。

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