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「うどん県」でおなじみ”香川県”
今回は「うどん」でおなじみ”うどん県”・・・いや、”香川県”の広報戦略を取り上げてみます。
記憶にも新しい「うどん県」から「ヤドン県」への改名記者会見。
もはや「うどん」なのか「香川」なのか「ヤドン」なのか、記事を執筆してて頭がゴチャゴチャしてきました(笑)
事あるごとに「うどん報道」で世間の話題をかっさらう香川県ですが、そのうどんプッシュには多くの意図があったのです。
「うどん」は”入り口”にしか過ぎない
皆さんは香川県の広報戦略は「うどんを食べに来てもらう」ことを目的と思われているかもしれませんが、実は違います。
はじめに結論を書いておくと、香川県の広報戦略のカギは
①「うどん県」という入り口を設け(認知)
②香川県の観光地・特徴を知ってもらい(イメージ付け)
③実際に観光で足を運んでもらう(消費)
以上の3ステップです。
あくまでも「(讃岐)うどん」は①入り口に過ぎず、③の観光消費に繋げるための「②意識付けのフェーズ」が重要なのです。
それでは、この3ステップに則って、香川県の広報戦略を読み解いてみます。
①「うどん県」という入り口
なぜ「うどん県」なのか
ある香川県の広報戦略をまとめた論文によると、「讃岐うどん」の認知度割合は首都圏・関西圏とも90%以上であるにもかかわらず、それ以外の名産品の認知度は低く、大きなギャップがあることが分かっています。(参考資料:http://61.112.28.18/pdf/udon.pdf)
これを踏まえ、香川県知事の浜田恵造氏はこう語っています。
以前、ある調査で、「香川県」の知名度が低い一方で「さぬき」は高いことが判明しました。それはきっと「さぬきうどん」の効果ではないかということになり、「うどん県」の名称を採用したのです。
(引用:https://www.projectdesign.jp/201503/pn-kagawa/001985.php)
つまり、「香川県」を広報のテーマにするのではなく、より一般認知度の高い「(讃岐)うどん」を広報のテーマに設定したというわけです。
徹底的な「うどん県」アピール
これを踏まえ、香川県は「30秒~3分の短い動画」「ネットを通じたPR」などを主体にして”うどん県”をアピールしていきます。
それではここで、「うどん県」としての香川の広報事例をいくつかご紹介します。
- プロモーションビデオ「うどん県に改名いたします」
香川県が「うどん県」戦略を始めたのは2011年のことで、そのプロモーションビデオのストーリーは「香川県出身の要潤さんが知事を演じ、うどん県の”改名”を行う」というもの。
うどん県に改名いたします――。俳優、要潤さんら香川県出身の有名人が演じる架空の「改名」記者会見のプロモーションビデオを香川県が観光情報サイトで公開した(以下略)
(引用:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG14017_U1A011C1CC0000/)
この動画が香川県の観光情報サイトでアップロードされると、なんと3時間で17万件ものアクセスが殺到し、サーバーダウンしてしまうというアクシデントまで発生してしまったのです(この事件は多くのメディアに取り上げられ、これにより「うどん県」の知名度向上へ大きく繋がったとのこと)。
(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG14017_U1A011C1CC0000/)
- 高松駅を「さぬきうどん駅」に改名
動画にあるように、これは「うどん県」PRの一環として香川県の県庁所在地である高松市の駅を「うどん県さぬきうどん駅」に改名し、しかもJR職員が”うどんネクタイ”と”うどんバッジ”を身につけるというもの。
しかも、「わかりにくい」という苦情から最終的に「さぬき高松うどん駅」に改名したということ。個人的に正直なところ、もはや意味不明です。
「うどん県」の”ゴリ押し”の裏には・・・
また、あるブログの情報によると、ある美術展覧会では
「うどん県民無料(香川県民は入場無料)」「うどん県民に限定バッジ進呈」「うどん県民にしか分からないWifi(うどんに関するクイズの答えがWifiのパスワード)」「うどん県民にうどんをプレゼント」(参考:https://mistersaturdays.com/udon)
もはや「うどん」のゴリ押しとしか捉えることができません・・・。
しかし、ここまでゴリ押しするからこそ、香川県・うどん県のブランド力を全国的で強固なものにできるのでしょう。
②香川県の観光地・特徴を知ってもらう(イメージ付け)
「うどん県。それだけじゃない香川県」
実は、先程ご紹介した”うどん県改名会見”には続きがあります。
約2分20秒のビデオは、要さん演じる副知事が改名を発表、それを知った金刀比羅宮宮司役の俳優、石倉三郎さん、学芸員役のバイオリニスト、川井郁子さんらが驚く一方、県内の観光地を紹介、「それだけじゃない」と県の魅力を紹介する内容。
(引用:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG14017_U1A011C1CC0000/)
つまり、香川県にとって「うどん」は二の次で、「うどん県アピール」の真の目的は「(うどん以外の)香川県の観光地・特徴を知ってもらうこと」だったのです。
それを踏まえ生まれたキャッチコピーが「うどん県。それだけじゃない香川県」だったのです。
こちらは、某ミュージカル映画をパロディしたと思われる「ウドン・オブ・ミュージック」というプロモーションビデオ。若干安っぽく感じる演技が困惑を誘いますが、映像の中でしっかり「うどん」以外の観光地・特産品を紹介しています。
それではここで、香川県が強く押し出している観光要素について紹介していきます。
”食”の「オリーブ」
香川県の”食”の一つとして「オリーブ」が押されています。
実は、香川県の小豆島(しょうどしま)は日本で初めてオリーブ栽培に成功した土地で、現在オリーブの国内生産量の9割は香川県が占めています。
香川県としてはこのオリーブを観光資源とし、なじみのあるオリーブオイルのみならず「オリーブの葉を与えた”オリーブハマチ”」「オリーブのしぼりかすを与えた”オリーブ牛”」のPRにも力を注いでいるとのことです。
(参考:https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/357/、https://www.projectdesign.jp/201503/pn-kagawa/001985.php)
”瀬戸内”と”アート”
香川県が力を注いでいるのが”瀬戸内”と”アート”のコラボレーション企画。
例えば、「瀬戸内国際芸術祭」は瀬戸内海の島々をアートとともに巡り、瀬戸内海や島々の人々、生活文化に出会ってほしいというテーマがあります。
しかも、初開催の2010年には約100万人が来場し、その島々も活気づいているようです。
また、Youtubeには「絵になるけん、アート県」「絵になるけん、うどん県」シリーズの観光誘致動画がアップロードされています。
自然豊かな瀬戸内だからこそ、アートという入り口から香川の魅力を感じ取ってもらいたい意図があるのでしょう。
(参考:https://mikata.shingaku.mynavi.jp/article/357/、https://www.sanyonews.jp/sp/article/943507?rct=kw_setogei)
まとめ
ここまで香川県の広報戦略を考察してきたわけですが、「うどんから香川県を認知してもらい、観光地・観光資源を知ることで香川県のイメージ付けを行い、最終的に香川県まで足を運んでもらう」という一連の流れは、まさにマーケティングの流れそのものです。
「東京一極集中による過疎化」「少子高齢化」・・・。
現代、地方都市が抱える問題は多くあります。しかし、香川県は「うどん」という自身の長所をしっかりと捉え、そこから香川県の観光資源を伝えることで広報戦略を確かなものにしました。
皆さんも自身の長所からキャッチとなる象徴を考え、そこから自身のコンテンツに引き込む”コシのある”広報戦略をお考えになってはいかがでしょうか。