これからの日本の経営で、PRをおろそかにする会社は、絶対に勝てないです。会社をやる、サービスをやる、共感をどう得るかが、すごく大事です。結局、選ぶ手法なんて死ぬほどあって、サービスもたくさんある(2017年5月 メルカリ社長小泉氏-logmiBiz)
簡単・早い・安心なフリマアプリとして、人気を誇る「メルカリ」はサービス開始からわずか5年の2018年11月に累計流通総額が1兆円を突破しました。
加えて、2019年現在では、月間のアクティブユーザーが1000万人以上の国内最大規模のCtoCマーケットに成長しました。
しかし、メルカリよりも先にフリマアプリのサービス提供をしていたラクマ(旧フリル)やヤフオクなどのように、似通ったサービスを提供する会社は多くあります。
また、大手のフリマアプリの販売手数料を比較すると図1のように、メルカリの販売手数料は、他社の販売手数料と比べて比較的高いことがわかります。

このように、販売手数料が競合他社と比べて高いにも関わらず、メルカリは2019年現在では、業界で二番目にダウンロード数の多いラクマよりも6000万以上もダウンロード数が多く圧倒的に大きな市場を持ちます。
なぜメルカリ、ここまで大きな市場を獲得できたのでしょうか。
理由はいくつかあると思いますが、文頭に書いたように、メルカリの社長小泉氏は大きな要因の一つがPR活動としています。
メディアでの露出で利用者増加
メルカリのヒットのきっかけの一つとして、PR活動を通したテレビの番組への露出が挙げられます。
2016年には、あるテレビ番組の企画でメルカリが取り上げられました。リユースショップよりもメルカリでの売却の方が数十倍ほど高く売れると取り上げられた際には、メルカリの知名度、ダウンロード数が爆発的に増えました。

このように、社会的に価値があり、数値として分かりやすい情報は
メディアに報道されやすいのです。
また、メディアに報道された情報は、発信元が企業である広告よりも情報に客観性が増し、信頼度の高い情報として受け取られます。
そのため、大きな反響を受けやすいと言う利点が広報にはあります。
加えて、このような報道は、メディアの広告枠を買っているわけではないので、基本的にお金をかけずに自社をアピールできるのです。
以上の理由から、すべての企業でメディアへのPR活動は重要な活動の一つです。
特に、高額な広告欄購入にお金を割く余裕がない、ベンチャー企業や中小企業には、非常に有効な手法でしょう。
サービス革新のための広報
メディアへ露出をすると急速に認知度が上昇します。そして、現在メルカ リには、SNSやインターネットなどを介して、社会から様々な反響が寄せられます。
認知度の上昇による反響は、ポシティブなものもあれば、ネガティブなものもあります。この両方をうまく活用していった手法もメルカリが成功した理由の一つでしょう。
ネガティブな報道もそうなんですけど、ポジティブな報道のなかでも、外の意見を社内にどうやってフィードバックしていくかもすごく大事だと思っています。要は、伝達役みたいなところですよね。ネガティブなことがあっても、言っていることに一理あると思うんです。その内容をきちんとプロダクト側に伝えて、改善していく。もしくは「そういう勉強会もやっていこうね」とか。(2016年9月 メルカリ社長小泉氏-logmiBiz)
このように、PR活動を通したコミュニケーションは、提供するサービスの
指針になります。
ポジティブな反応は、メルカリが提供しているサービスに価値があることを示します。
一方でネガティブな反応は、サービスの成長余地を示してくれます。
より社会に必要とされるサービスに近づけるために必要不可欠なものです。
このように、PR活動によるこのようなメディア露出はその特性から、企業の成長を後押しするツールとなります。
オウンドメディア「メルカン」

メルカリはメディアに対するPR活動とは別に、自社メディアの
『メルカン』を運営しています。
メルカンでは以下のようにメニュー分けされています。
・バリュー
・はたらく仲間
・メルペイ・ソウゾウ
・制度やイベント
・メルカリな日々
このように、メルカンではバリューや仲間、メルカリ社員の生活などをテーマにしたコンテンツをオープンに配信しています。
メルカリは、このようなコンテンツをメルカンのウェブサイトを解説する前から、先駆的にWeb上に発信してきました。
これは、社外にメルカリのバリューや社内環境をアピールでできるだけではなく、取り上げられた社員のモチベーションに繋がるなど、社内に向けられたものでもあります。
結果的に、メルカリの魅力を内外に伝えることになり、自社のブランディング、採用促進や信頼度の向上、社内のモチベーションスコア向上を図れるのです。
理想の組織を作るPR活動

メルカン内で、メルカリのバリューを発信していくことは社会に向けたメッセージでもあり、メルカリという組織の軸でもあります。
メルカリでは、バリューである「Go Bold」「All For One」「Be Proffesional」そしてミッションである「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」を非常に大事にしています。
組織内で、各メンバーの能力が高い場合であっても、目指す方向性がバラバラであると、結果的に組織全体の生産性を下げ、モチベーションスコアの低い組織になる原因になります。
そのため、企業の指針となるミッションとバリューを発信していくことにより、組織の目標を明確にし、メルカリと社員の間に考え方や判断基準のギャップを無くす役割を持っています。
メルカリはミッションやバリューを発信してきたことにより、生産性が高い組織の構築に成功しました。
メルカリの採用戦略
たまに、僕らの会社にありがちなのは、ちょっとプロフェッショナル色が強すぎてしまって、若手が来ないことが起きるんです。あと、女性が来ない。なんか、30代以上のゴリゴリの男性しか来ない(笑)。若いセンスがほしいけど、そういう子からすると「メルカリ怖い、強すぎる」みたいになっちゃうんです。そういうときは、けっこう若手や女性を出して、実は、こういう活躍をしている人もいるんですよと
メルカリは、レベルの高いプロダクトサービスとプロフェッショナル人材が多い環境にあります。このイメージは、社会的にも広がっており、
プロダクトへの信頼感やブランディングに良い影響を及ぼしています。
一方で、こういったプロフェッショナル色の強いイメージは、一部の若い世代、特に女性に対してメルカリへの応募意欲を萎縮させていました。
このような、イメージを払拭するために、メルカンでは若い社員が活躍しているコンテンツを多く投稿する手法で、採用PRを実践しています。
ハイレベルのサービスや技術力のイメージと女性も多く働いているイメージを、メルカン内のインタビュー記事などのコンテンツにしていくことで、共存させているのです。
まとめ
文頭にもあったように、サービス自体の差別化が難しい時代において、メルカリは広報活動を通して、メルカリの提供するサービスやVisionを発信し、社会の声を公聴するという、双方向のコミュニケーションによって、企業価値の向上を図りました。
その結果、単純な売り上げだけではなく、組織作りや採用などのあらゆる面で成長していきました。
これによって、フリマアプリのブームを作ったことにとどまらず、社会にムーブメントを起こすまでの企業に成長したのではないでしょうか。
メルカリが実践したPR活動のように、創業間もない企業や広告に割く資金がない企業にとってPR活動はあらゆる点で効果的ではないかと思います。