※この記事は月刊エミダス(ベトナム版)の2020年4月号で掲載したインタビュー記事と同じものです※
今回は、皆さんの身の回りの「ケーブル」に焦点を当ててみたいと思う。一口にケーブルとはいっても、スマホの充電器やPCのコード・家電製品の中身となるコード・自動車全体をつなぐコードなど、その種類は様々だ。
今回ご紹介するのは、そんなケーブルの数々をベトナムで提供している「NKグループ」だ。「主力製品となるケーブルの特徴」「品質を保つ秘密」「今後の展開」から、NKグループの正体を探っていく。
目次
NKグループの売上は毎年1億ドル。高電圧から低電圧までを扱うスペシャリスト企業だ。
NKグループは1994年、現本社を構えるロンビエン地区で設立された。ハノイ市内や近郊で営業をしていたが、日系グループ企業「矢崎総業」との提携開始を機に、人材育成や機械投資などに成功し事業規模が拡大。毎年1億ドルを稼ぐ一大企業へと成長し、今に至っている。
NKグループは2つの子会社から成り立っており、それぞれ高電圧・低電圧の電線を製造している。まずはじめに、NKグループが扱う主力電線を簡単にご紹介しよう。
- ワイヤーハーネス
ワイヤーハーネスは電源供給や信号通信に用いられる電線を束にしたもので、大量の電気配線を必要とする機械で用いられる特殊な高電圧用ケーブルだ。TOYOTA・日産・スズキ・ホンダなど日本の有名自動車メーカーで使用されている。
このワイヤーハーネスはNKグループ最大の主力製品で、矢崎総業(日本のグループ企業。自動車部品などを開発しているメーカーで、ワイヤーハーネスのシェア率は全世界の1/3)と提携を結び、車用のケーブルを独占的に提供している。
- アルミケーブル
生活用品にも使われる高電圧用ケーブル。500kWの交流電気に対応できるもので、ベトナム全土で使うことが可能である。主な提供先は国家企業。
このアルミケーブルは鉄とアルミから作られるのだが、高品質を安定的に保つために、材料は100%日本から仕入れている。
- 低電圧ケーブル
NKグループの場合、工場建設の際で用いられるため工業団地で活躍する機会が増えているという。それら以外でもベトナムの国営電機企業に提供している。
この低電圧ケーブルは日系企業・韓国系企業にも多く提供され、Samsungがベトナムで工場を作った際にも使用されたという。ミャンマーやアンゴラの建築工事でも使用されるなど、海外進出も進んでいる。
このように、NKグループは様々なケーブルを製造しているスペシャリスト企業なのだ。
ケーブルの提供から100%の満足を実現。NKグループの品質徹底の中身とは。
様々なケーブルを提供しているNKグループは、高品質でケーブルを提供するため幾つもの創意工夫を行っている。
まず、NKグループの成功を支えるファクターのひとつに「ケーブルの圧縮技術」がある。使われるものによってケーブルの大きさは異なるが、例えば、車で使われるケーブルは小さく細くあればあるほど、余剰のスペースが生まれ新たな設備の導入や軽量化につなげられる。より小さく細いケーブルを提供することはクライアントを本当の意味で助け、他企業にはできないアピールを行えるのだ。より良い電線を提供するために、ケーブルそのものへのこだわりも欠かせないのである。
また、ケーブルを製造する設備にもこだわりを見せる。なんと、NKグループは全ての設備を海外から仕入れているという。そこでNKグループはドイツやイタリアから購入し、ケーブル製造の効率化などに成功した。ベトナムでは中国・台湾から機械を仕入れる企業も多いが、それらでは品質が低くなってしまう傾向があると考えているためだ。
そしてクライアントに対するフォローサービスも完璧だ。依頼を受けるとNKグループは社員を現地の工場に派遣しケーブル構築を支援。実際に使うようになってからも電話でアフターサービスを行い、使い心地や要望について事細かにコンサルティングを行っていく。依頼を受けて実際の現場で使い慣れていくまでの工程すべてをサポートしているのだ。
自動車や大企業の工場など、低品質が許されない発注に対して100%満足してもらえるよう、内から品質徹底を行っているのだ。
ケーブル業界の先導者として、未開拓のケーブル市場を突き進む。
本誌で特集したように、ベトナムの経済成長と工業団地は切っても切れない存在にある。今後も工業団地内で新たな生産工場を建設する海外企業は増えていく見通しだが、そこで活躍してくるのがNKグループだ。先程説明したようにNKグループは低電圧電線を工場団地で売り込んでいるため、このトレンドは大きな機会となるのだ。また、ベトナム政府は太陽光発電など環境に優しい発電所を作ることを推進しており、発電所の数が増えていく予測があるという。必然的にそこで作り出された電気を使うわけになるので、それを運ぶケーブルは今後も売り出していけるのだ。これら以外にも、NKグループはテレビやコンピュータに使われる電子製品用のケーブルの利益拡大や、自動化生産設備専用のケーブルの開発も進めている。
「たかがケーブル、されどケーブル」
ケーブル業界のトップに君臨する先導者の抱くメラメラとした熱意が、貴方にも伝わってきたのではないだろうか。今後もNKグループは、新たなケーブル市場の開拓に向かって驀進していくことに違いない。